手荒れ(手湿疹)とは?

手荒れ(手湿疹)は、皮膚科で非常に多くみられる病気です。
「ただの乾燥かな」
「ハンドクリームを塗っているのに治らない」
「仕事でどうしても悪化してしまう」
このようなご相談を日々多くいただきます。
手の皮膚には、外からの刺激を防ぐ皮膚バリア機能があります。
しかし、頻回の手洗い、アルコール消毒、洗剤、水仕事、薬品、摩擦などが繰り返されると、皮膚バリアが壊れ、刺激が入りやすくなります。
その結果、乾燥、赤み、かゆみ、ひび割れ、ジュクジュクなどが起こります。

手荒れは、別名で進行性指掌角皮症と呼ばれることもあります。

手荒れの原因と症状

手荒れの原因は1つではなく、複数の要因が重なっていることが多いです。

最も多いのは、刺激性接触皮膚炎です。
原因になりやすいものは、
・水・お湯
・石けん・洗剤
・アルコール消毒
・シャンプー
・パーマ液・薬品
・食材
・摩擦
などです。
毎日の小さな刺激が積み重なることで、手荒れが悪化します。

特定の物質へのアレルギーが原因のこともあります。
代表的なものは、
染毛剤のジアミン
・ゴム手袋
・ラテックス
・ゴム加硫促進剤
・金属
・防腐剤
・香料
・消毒薬
などです。
この場合、薬を塗るだけでは不十分で、原因物質を見つけて避けることが大切です。

軽症では、カサカサ、乾燥、つっぱり感がみられます。
進行すると、赤み、かゆみ、小さな水ぶくれ、皮むけが出ます。
・重症になると、
・ひび割れ
・ジュクジュク
・出血
・強い痛み
・手が曲げにくい
など、日常生活や仕事に支障が出ることもあります。

職業性手湿疹について

仕事が原因で悪化する手湿疹は非常に多くみられます。

主婦・育児中の方

食器洗い、洗剤、手洗い、哺乳瓶洗浄、おむつ交換、消毒などで手洗い回数が増え、急激に悪化することがあります。
特に赤ちゃんがいる時期は注意が必要です。

看護師・医療従事者

頻回の手洗い、アルコール消毒、手袋、消毒薬、クロルヘキシジン、蒸れなどが原因になります。
コロナ以降、医療従事者の手荒れはかなり増えています。

介護職

手洗い、消毒、入浴介助、排泄ケア、手袋使用などで悪化します。
湿った環境と消毒の繰り返しが大きな負担になります。

飲食業

水仕事、洗剤、アルコール、食材刺激が原因になります。
にんにく、玉ねぎ、柑橘類、香辛料などで刺激が強く出ることもあります。

金融機関・事務・SE

意外に多いのが、紙、空調乾燥、アルコール消毒、摩擦による手荒れです。
紙を扱う仕事では乾燥しやすくなります。

美容師の手荒れ・ジアミンかぶれ

美容師さんの手湿疹は非常に多く、重症化しやすい代表的な職業性手湿疹です。

原因は1つではなく、
・シャンプー
・お湯
・界面活性剤
・パーマ液
・ブリーチ
・カラー剤
・手袋の蒸れ
など、複数の刺激やアレルギー要因が重なって起こります。 単なる「乾燥」ではなく、日々の業務そのものが皮膚に強い負担をかけている状態です

美容師のジアミンかぶれ(染毛剤アレルギー)

美容師さんの手荒れで特に重要なのが、染毛剤に含まれるパラフェニレンジアミン(PPD)などのジアミン系染料によるアレルギー性接触皮膚炎です。
ジアミンかぶれは、最初から起こるとは限りません。
最初は問題なくても、仕事で何度もカラー剤に触れるうちに、ある時点で体がアレルギーとして反応するようになることがあります。これを感作といいます。
また、手荒れがある状態では皮膚バリアが壊れているため、ジアミンに感作されやすくなる可能性があります。

ジアミンかぶれの感作予防

感作を防ぐためには、カラー剤に素手で触れないことが非常に重要です。

具体的には、
・カラー剤の調合時から手袋を着用する
・塗布時、洗い流し時も手袋を外さない
・手袋に穴が開いていないか確認する
・使い捨て手袋を適切に交換する
・汚染された手袋で顔や首を触らない
・カラー剤が手についたらすぐに洗い流す
・手荒れがある時ほど素手で薬剤に触れない
・普段から保湿を行い、手荒れを放置しない
ことが大切です。

ジアミンかぶれを発症した場合

一度ジアミンアレルギーを発症すると、少量の接触でも強い皮膚炎を起こすことがあります。

そのため、
「皮膚科の薬を塗りながらカラー剤に触れ続ける」
だけでは改善が難しいことが少なくありません。
必要に応じて、
・パッチテスト
・原因物質の確認
・防護方法の見直し
・業務内容の調整
を検討します。

発症後の業務上の注意

ジアミンかぶれを発症した場合は、以下のような対策が必要です。
・カラー剤の調合を避ける
・カラー塗布を避ける、または防護を徹底する
・シャンプー時のカラー剤残留に注意する
・汚染されたクロス、タオル、器具への接触に注意する
・手袋を二重にする
・袖口から薬剤が入らないようにする
・手袋の素材を見直す
・皮膚炎が強い時期はカラー業務を一時的に制限する
重症例では、カラー業務そのものの継続について職場と相談が必要になることもあります。

手袋かぶれにも注意

ジアミン対策として手袋は非常に重要ですが、手袋そのものが原因でかぶれることもあります。
たとえば、
ラテックスアレルギー
ゴム加硫促進剤アレルギー
蒸れによる手湿疹
などです。
そのため、美容師さんの手荒れでは、
「薬剤による手荒れ」なのか
「手袋によるかぶれ」なのか
「両方あるのか」
を見極めることが大切です。
症状が長引く場合には、ジアミンだけでなく、手袋成分や他の薬剤も含めてパッチテストを検討します。

手袋かぶれ・ラテックスアレルギー

「手荒れ予防のために手袋をしているのに悪化する」ことがあります。

原因としては、
蒸れ
ラテックスアレルギー
ゴム加硫促進剤アレルギー
添加物
摩擦
などがあります。

ラテックスアレルギー

天然ゴムに対するアレルギーです。
普通の湿疹とは異なり、即時型アレルギーとして、じんましん、腫れ、まれに呼吸症状を起こすことがあります。
当院では必要に応じて、採血でラテックス粗抗原、Hev b 6.02などを調べることがあります。

ゴム加硫促進剤アレルギー

ゴム手袋そのものではなく、ゴム製品を作る際の化学物質にかぶれることがあります。
チウラム、カルバメート、メルカプト系などが原因になることがあり、パッチテストで調べます。
ニトリル手袋でも、添加物や蒸れで悪化することがあるため、「ニトリルなら絶対大丈夫」とは限りません。

異汗性湿疹と金属アレルギー

異汗性湿疹、いわゆる汗疱は、手のひらや指に小さな水ぶくれができる病気です。
「汗が詰まったようなプツプツ」
「小さな水ぶくれがたくさんできる」
と表現されることがあります。
原因ははっきりしないこともありますが、
・汗
・湿度
・ストレス
・アトピー体質
・金属アレルギー
などが関係することがあります。
特に、ニッケル、コバルト、クロムなどの金属アレルギーが関与することがあります。
金属を含む食品や歯科金属との関連が疑われることもありますが、全員に当てはまるわけではありません。
疑わしい場合には、金属パッチテストを検討します。

手荒れと間違いやすい病気

治らない手湿疹では、別の病気を考える必要があります。

手白癬

いわゆる手の水虫です。
片手だけのカサカサや皮むけとして出ることがあり、湿疹と非常によく似ています。
ステロイドだけを塗ると悪化することがあるため、顕微鏡検査で確認します。

掌蹠膿疱症

手のひらに膿疱、赤み、皮むけが出る病気です。
湿疹と間違うことがあります。

掌蹠角化症

手湿疹は炎症の病気で、赤み・かゆみ・水ぶくれ・ジュクジュクが出やすく、洗剤や手洗いで悪化します。
掌蹠角化症は角質が厚くなる病気で、ゴワゴワ・黄色っぽい厚み・深いひび割れが主体で、かゆみは少なめです。
ただし慢性の手湿疹は分厚くなって似るため、診察での区別が重要です

その他

尋常性乾癬、疥癬、梅毒、膠原病なども、症状によって鑑別に入ります。

治らない手湿疹について

治らない場合、
原因物質に触れ続けている
・ジアミンなどのアレルギー
・ラテックス
・ゴム加硫促進剤
・手白癬
・乾癬
・異汗性湿疹
・金属アレルギー
などを見直します。

必要に応じて
・パッチテスト
・金属パッチ
・顕微鏡検査
・ラテックス採血
・皮膚生検
を行います。

検査と治療

検査

必要に応じて以下を行います。
・顕微鏡検査:手白癬の確認
・パッチテスト:染毛剤、ゴム、防腐剤、香料、金属など
・金属パッチテスト:金属アレルギー評価
・採血:ラテックスアレルギー、自己免疫疾患など
・皮膚生検:診断が難しい場合

治療について

手湿疹の治療は、単に「薬を塗る」だけではありません。
炎症を抑えること、皮膚バリアを回復させること、原因を見つけて避けることが大切です。
症状の強さ、職業、原因によって治療は変わります。

保湿治療(治療の土台)

手湿疹では、皮膚バリアが壊れています。
そのため、まず重要なのが保湿です。
・保険適応の保湿剤
・ハンドクリーム
・バリア保護クリーム
などを使い、皮膚を守ります。
理想は手洗いごとの保湿です。
特に
・主婦
・医療従事者
・介護職
・飲食業
・美容師
では非常に重要です。

ステロイド外用薬

炎症がある場合の基本治療です。
・赤み
・かゆみ
・水ぶくれ
・ジュクジュク
・ひび割れ
がある場合は、保湿だけでは不十分なことが多く、ステロイド外用薬が必要になります。
手の皮膚は顔よりかなり厚いため、症状によってはしっかりした強さの外用薬が必要です。

非ステロイド外用薬(皮膚萎縮対策)

ステロイドは非常に有効ですが、長期間使用すると以下の症状がでる場合があります。
皮膚が薄くなる(皮膚萎縮)
毛細血管拡張
使い続ける不安
そのため、
維持治療(難治の場合も含む)
再発予防
長期管理
では、以下のような非ステロイド外用薬を使うことがあります。
タクロリムス軟膏(プロトピック)
モイゼルト軟膏(PDE4阻害外用)
コレクチム軟膏(JAK阻害外用)
ブイタマークリーム

ひび割れ治療

手湿疹でつらいのが「割れる痛み」です。
ひび割れは放置すると
・出血
・細菌感染
・強い痛み
・仕事困難
につながります。

治療として
・ステロイド外用
・ステロイドテープ治療
・密封療法(ODT)
・保護処置
を組み合わせます。
テープ治療とは、ステロイドのついたテープ剤を患部に貼って治療する方法です。
手湿疹では特に、ひび割れ・分厚く硬くなった部分・指先の治りにくい湿疹に有効です。

メリットは
・薬が長時間しっかり効く
・患部を保護できる
・ひび割れの痛みを和らげる
・無意識に触ったり掻いたりしにくい
ことです
代表はエクラープラスター(ステロイド含有テープ)で、手荒れの頑固な指先湿疹でよく使います。
ただし、広範囲には不向きで、かぶれたり蒸れたりすることがあります。

内服薬

かゆみが強い場合は内服薬を使います。
・抗ヒスタミン薬
・抗アレルギー薬
などです。
夜間のかゆみや掻き壊しを減らすのに役立ちます。

光線治療(エキシマライト):難治性手湿疹の治療

治りにくい手湿疹では非常に有効な治療です。
またステロイドで皮膚がパリパリになっている場合にも、少しでもステロイドを減量するために非常に役に立ちます。
当院では頑固な手荒れには
エキシマライト(ターゲット型ナローバンドUVB)
による治療を行っています。もちろん保険適応です(1回1,000円程度)。
週1~2回が目安になります。
以下のような狙った場所に高出力で照射できるため、効率よく治療できます。
・指先だけ
・ひび割れ中心
・一部分だけ悪い
・分厚い慢性湿疹

    エキシマライト(ナローバンドUVB)

    全身型ナローバンドUVB

    光線治療のメリット

    ・ステロイドを減らせる
    ・慢性の分厚い湿疹に有効
    ・ひび割れ改善
    ・難治例に有効

    日常生活でのスキンケア

    手湿疹は、治療だけでなく日常のケアが大切です。
    ・手洗い後はこまめに保湿する
    ・熱いお湯を避ける
    ・水仕事では手袋を使う
    ・手袋の中が蒸れる場合は綿手袋を併用する
    ・寝る前に保湿して綿手袋をする
    ・アルコール消毒後も保湿する
    完全に刺激を避けることは難しいため、生活や仕事に合わせた現実的な対策を一緒に考えることが大切です。

    よくある質問

    Q. ハンドクリームだけで治りますか?
    A.軽い乾燥なら改善することもあります。
    しかし、赤み、かゆみ、ひび割れ、水ぶくれがある場合は、炎症が起きているためハンドクリームだけでは不十分なことがあります。
    必要に応じて、ステロイド外用薬、かゆみ止め、原因検索を行います。


    Q. ステロイドを塗り続けても大丈夫ですか?
    A.適切に使えば大丈夫です。
    むしろ炎症を中途半端に放置すると、ひび割れ、慢性化、皮膚の厚み、治りにくさにつながります。
    手の皮膚は厚いため、症状に合った強さの薬をしっかり使うことが大切です。
    漫然と塗り続けるのではなく、状態に応じて調整します。


    Q. 美容師ですが、仕事を辞めないと治りませんか?
    A.必ずしもそうではありません。
    シャンプーやカラー剤などの刺激性手湿疹であれば、手袋、スキンケア、治療でコントロールできることがあります。
    ただし、ジアミンアレルギーがある場合は注意が必要です。
    原因物質に触れ続けると治りにくいため、パッチテストなどで原因を調べることがあります。


    Q. ゴム手袋で悪化します。なぜですか?
    A.手袋の蒸れ、ラテックスアレルギー、ゴム加硫促進剤、添加物、摩擦などが原因になります。
    手袋は手荒れ予防に役立つ一方で、合わない手袋を使うとかえって悪化することがあります。
    必要に応じてパッチテストや採血を行います。


    Q. 金属アレルギーで手湿疹になりますか?
    A.なることがあります。
    特に異汗性湿疹では、ニッケル、コバルト、クロムなどの金属アレルギーが関係することがあります。
    ただし全員が金属アレルギーというわけではありません。
    疑わしい場合に金属パッチテストを検討します。


    Q. 手の水虫との違いは?
    A.手の水虫は湿疹とよく似ています。
    片手だけのカサカサや皮むけがある場合は注意が必要です。
    ステロイドだけを塗ると悪化することがあるため、必要に応じて顕微鏡検査で確認します。


    Q. 光線治療は効きますか?
    A.難治性手湿疹では非常に有効なことがあります。
    当院ではエキシマライトを使用しています。
    外用薬だけで改善しにくい場合の選択肢になります。


    Q. 治らないのはなぜですか?
    A.原因物質に触れ続けている、アレルギーがある、手袋が合わない、手白癬や乾癬など別の病気が隠れている、仕事環境で悪化しているなどが考えられます。
    治らない場合は、診断と原因を見直すことが重要です。


    Q. 完治しますか?
    A.原因によります。
    一時的な刺激なら改善しやすいですが、職業性手湿疹では再発しやすいことがあります。
    ただし、原因対策、スキンケア、治療を組み合わせることで、かなり良い状態を維持できるケースは多いです。


    監修 日本皮膚科学会認定皮膚科専門医・医学博士 宮田義久