痒疹(ようしん)とは?
痒疹(ようしん)は、非常に強いかゆみを伴う赤いブツブツや硬いしこりができる皮膚の病気です。
患者さんからは
虫刺されがずっと治らない
かゆくて掻いていたら硬いしこりになった
市販薬を塗ってもなかなかよくならない
夜になるとかゆみが強くなる
かゆくて眠れない
何か月も同じ場所が治らない
このようなご相談をよくいただきます。
単なる湿疹や虫刺されと思っていたものが、実は痒疹であることも少なくありません。
特に結節性痒疹(けっせつせいようしん)では、硬く盛り上がったしこりのような皮疹ができ、非常に強いかゆみを伴い、長期間治りにくくなります。
痒疹は
かゆい → 掻く → さらに悪化 → もっとかゆい
という悪循環に入りやすい病気です。
この悪循環を断ち切ることが治療の重要なポイントです。

痒疹の症状
痒疹では以下のような症状がみられます。
・強いかゆみ
・赤いブツブツ
・盛り上がった発疹
・硬いしこり
・掻き壊し
・かさぶた
・色素沈着
・出血
・長期間治らない皮疹
症状が長引くと、見た目だけでなく睡眠や日常生活にも大きく影響します。
痒疹の種類
急性痒疹
虫刺されや一時的な刺激をきっかけに急に発症するタイプです。
比較的小さな赤いブツブツが複数でき、強いかゆみを伴います。
慢性痒疹
数週間〜数か月以上続くタイプです。
慢性的なかゆみや掻き壊しが関与し、治りにくくなることがあります。
結節性痒疹
痒疹の中でも特に治りにくいタイプです。
強いかゆみにより掻き続けることで、皮膚が硬く盛り上がり、しこり(結節)のようになります。
非常につらいかゆみを伴い、従来の治療だけでは改善しにくいこともあります。
痒疹の原因
痒疹の原因はひとつではありません。
・代表的な原因として
・虫刺され
・アトピー性皮膚炎
・乾燥肌
・慢性的なかゆみ
・摩擦刺激
・掻き壊し
・ストレス
があります。
また、背景に内科的な病気が関係することもあります。
・糖尿病
・腎機能低下
・肝疾患
・血液疾患
などです。
そのため、なかなか治らない場合には背景疾患も含めて考えることがあります。
痒疹の治療
痒疹の治療では、単に発疹を治すだけではなく、
「かゆみを抑える」
「掻き壊しの悪循環を断ち切る」
「背景にある原因を見極める」
ことが大切です。
症状の強さやタイプに応じて治療を組み合わせます。
外用治療(塗り薬)
まず基本となる治療です。
ステロイド外用薬
炎症を抑え、かゆみや赤みを改善します。
痒疹では比較的しっかりした強さの外用薬が必要になることもあります。
保湿剤
乾燥はかゆみを悪化させる大きな原因です。
皮膚のバリア機能を整え、かゆみの悪循環を防ぐためにも保湿は重要です。
その他の外用薬
症状によってかゆみを抑える非ステロイド系外用薬を使うことがあります。

内服治療(飲み薬)
抗ヒスタミン薬
かゆみを抑える代表的な治療です。
眠気が少ないタイプもあります。

光線療法
難治性の痒疹では、紫外線を使った治療(光線療法)が有効なことがあります。
炎症やかゆみを抑える目的で行います。
全身の痒疹には全身型ナローバンドUVB
腕や下腿などの限定された部位の痒疹には、エキシマライト
を当院では保険適応で行っております。
局所注射
結節性痒疹のように硬く盛り上がった病変では、ケナコルトなどのステロイド局所注射が有効なことがあります。ただし、痒疹は掻き壊していることが多く、傷に注射することが多く時に細菌感染がおこる場合があります。
局所難治性痒疹に対する新しい治療注射
「通院しているのに何をしても治らない」
「かゆくて夜眠れない」
「何年も繰り返している」
このような難治性痒疹では、新しい治療選択肢があります。
☆デュピクセント
デュピクセントは、生物学的製剤(注射薬)です。2週に1回注射します。
IL-4、IL-13という炎症に関わる物質を抑えることで、かゆみや炎症を改善します。
もともとはアトピー性皮膚炎の治療薬として知られていますが、痒疹の一部でも保険適応で使用されます。
以下のような方で検討することがあります。
・強めのステロイド外用薬で改善しない
・強いかゆみが続き日常生活に支障がある
・外用剤が効きにくい大型の痒疹(結節性痒疹)が多数ある
・アトピー性皮膚炎を合併している
☆ミチーガ
ミチーガは、かゆみに深く関係するIL-31を標的にした生物学的製剤(注射薬)です。1か月に1回注射します。
「とにかくかゆい」
「眠れないほどかゆい」
というかゆみが強い患者さんでは非常に期待される治療です。
従来の飲み薬や強めのステロイド外用で十分な改善が得られない場合に検討します。
日常生活で気をつけること
- 掻かない工夫
痒疹は
かゆい → 掻く → 悪化 → もっとかゆい
という悪循環が最大の問題です。
治療をしていても、掻き続けてしまうとなかなか改善しません。
とはいえ、「掻かないでください」と言われても難しいですよね。
そこで、以下のような工夫がおすすめです。
・爪を短く切る
無意識に掻いてしまっても皮膚へのダメージを減らせます。
・かゆい時は掻く代わりに冷やす
保冷剤をタオルで包んで軽く当てると、かゆみが和らぐことがあります。
・ガーゼや包帯、テープで保護する
つい触ってしまう場所は物理的にガードすると掻き壊し予防になります。
・寝る時は綿の手袋を使う
就寝中は無意識に掻いてしまいやすいため有効です。
・ストレスや睡眠不足に注意する
かゆみが強くなりやすいことがあります。
・アルコールや辛い物を避ける。
強いかゆみがある場合は、我慢だけで乗り切るのは難しいこともあります。
その場合は、飲み薬や注射などでまずかゆみ自体をしっかり抑える治療が大切です。
保湿
乾燥はかゆみを悪化させます。
毎日の保湿で皮膚バリアを整えましょう。 - 摩擦を避ける
衣類のこすれや刺激でも悪化することがあります。 - 入浴
熱いお風呂はかゆみを悪化させることがあります。
ぬるめの入浴がおすすめです。
このような方はご相談ください
・虫刺されがずっと治らない
・かゆいブツブツが長く続く
・掻いていたら硬いしこりになった
・夜眠れないほどかゆい
・市販薬でよくならない
・他院で改善しなかった
・アトピー体質がある
・新しい治療について相談したい
よくある質問(Q&A)
Q. 虫刺されだと思っていたのですが、なかなか治りません。痒疹でしょうか?
A.その可能性があります。
痒疹は虫刺されをきっかけに始まることもあり、見た目が似ていることがあります。
ただ、通常の虫刺されよりも長引いたり、強いかゆみが続いたり、硬いしこりのようになる場合は痒疹を疑います。
Q. 痒疹はうつりますか?
A.基本的にうつる病気ではありません。
ただし、ダニの一種である疥癬(かいせん)など、かゆみの強い別の移る病気が隠れていることもあるため、自己判断はおすすめしません。
Q. 痒疹は自然に治りますか?
A.軽いものは改善することもあります。
ただ、慢性化すると
かゆい → 掻く → 悪化 → もっとかゆい
という悪循環に入り、自然に治りにくくなることがあります。
痒疹が小さい初期のうちなら外用剤の反応もよいと思いますが、放置してだんだん大きく硬くなってしまうと外用薬の効き目が少なくなってしまいます。
Q. 結節性痒疹とは何ですか?
A.痒疹の中でも、硬く盛り上がったしこり(結節)ができるタイプです。
非常に強いかゆみを伴い、長期間治りにくいことがあります。
Q. 痒疹はなぜ治りにくいのですか?
A.最大の理由は「掻いてしまうこと」です。
痒みで掻く
↓
皮膚が傷つく
↓
炎症が悪化
↓
さらにかゆくなる
という悪循環が起こります。
Q. 夜になるとかゆみが強くなります。なぜですか?
A.よくあることです。
体温の変化や神経の影響で、夜はかゆみを感じやすくなります。
睡眠不足にもつながるため、早めの治療が大切です。
Q. 痒疹とアトピーは関係ありますか?
A.あります。アトピー性皮膚炎のある方は痒疹を合併することがよくあります。塗り薬をぬってアトピーの通常の発疹はピカピカなのに、痒疹だけが残っている状況はよくあります。
Q. デュピクセントは痒疹に使えますか?
A.難治性の痒疹で使用を検討することがあります。
特にアトピー体質がある方や、従来治療で改善しない方で選択肢になります。
Q. ミチーガとは何ですか?
A.かゆみに深く関係するIL-31という物質を抑える生物学的製剤の注射治療です。
「とにかくかゆい」
「夜眠れない」
という強いかゆみに大きな効果のある治療です。
Q. 他院で治らなかったのですが相談できますか?
A.もちろんです。痒疹は治療が難しいこともありますが、新しい治療選択肢も増えています。当院では
・原因の区別
・適切な外用治療
・光線療法
・生物学的製剤の注射
など保険適応のほぼすべての治療が可能です。
監修 日本皮膚科学会認定皮膚科専門医・医学博士 宮田義久