尋常性乾癬(じんじょうせいかんせん)とは?
尋常性乾癬(じんじょうせいかんせん)は、赤い発疹の上にフケのような白い皮むけ(鱗屑:りんせつ)ができる慢性の皮膚疾患です。
患者さんからは
・フケのようなものがポロポロ落ちる
・肘や膝に赤いガサガサがある
・頭皮のフケがひどい
・湿疹と思っていたが治らない
このようなご相談をよくいただきます。
よくなったり悪くなったりを繰り返すことが多く、長く付き合っていく必要のある病気です。
かゆみを伴うこともあります。
全身どこにでもできますが、特に
・肘
・膝
・頭皮
・お尻
・腰
・すね
などにできやすい傾向があります。顔には比較的少ないです。
乾癬の病型と特徴
尋常性乾癬
乾癬の中でも最も多いタイプです。
赤い発疹の上に、白いフケのような皮むけがつき、ポロポロとはがれ落ちます。
滴状乾癬
小さな赤い発疹が、雨粒のように全身に広がるタイプです。
扁桃炎などの感染症をきっかけに出ることがあります。
乾癬性紅皮症
乾癬の炎症が全身に広がり、皮膚全体が赤くなる重症タイプです。
発熱、倦怠感、むくみなどを伴うこともあり、専門的な治療が必要です。
膿疱性乾癬
赤い皮膚の上に、膿のように見える小さな膿疱が出るタイプです。
感染による膿ではなく、乾癬の炎症によるものです。
発熱や全身症状を伴う場合は重症です。
乾癬性関節炎
皮膚症状だけでなく、関節の痛みや腫れを伴う乾癬です。
手指、足趾、膝、腰、アキレス腱付着部などに症状が出ることがあります。
以下がある場合は注意です。
・朝に手指がこわばる
・指全体がソーセージのように腫れる
・爪が変形している
・かかとやアキレス腱が痛い
・腰や背中が痛い
乾癬性関節炎は、放置すると関節破壊につながることがあるため、早めの診断が重要です。
似ている皮膚病の区別
脂漏性皮膚炎
頭皮や顔に赤み、フケ、かゆみが出ます。
頭皮乾癬とよく似ています。
鑑別ポイント
乾癬では、境界が比較的はっきりした赤い局面と厚い鱗屑がみられやすいです。
脂漏性皮膚炎では、鼻まわり、眉間、耳まわりなど皮脂の多い部位に出やすい傾向があります。
湿疹・皮膚炎
赤み、かゆみ、かさつきが出るため乾癬と似ることがあります。
鑑別ポイント
湿疹はジュクジュクしたり、かゆみが強いことが多く、乾癬は厚みのある赤い局面と白い皮むけが目立ちます。
白癬・体部白癬
いわゆる水虫菌による皮膚感染症です。
体にできると、赤く丸い発疹となり乾癬と似ることがあります。
鑑別ポイント
必要に応じて顕微鏡検査で真菌の有無を確認します。
ステロイドを塗ると悪化することがあるため、見極めが大切です。
扁平苔癬
紫がかった発疹が出る病気で、乾癬と区別が必要なことがあります。
鑑別ポイント
色調、発疹の形、できる部位、口の中の症状などを確認します。
必要に応じて皮膚生検を行うこともあります。
梅毒性乾癬
梅毒の皮疹が乾癬のように見えることがあります。
鑑別ポイント
手のひら・足の裏の発疹、リンパ節腫脹、既往歴などを確認し、必要に応じて血液検査を行います。
薬疹
薬の影響で乾癬に似た赤い発疹が出ることがあります。
鑑別ポイント
新しく始めた薬、サプリメント、市販薬の使用歴を確認します。皮膚炎の基本治療(外用剤、内服、保湿、スキンケア)をしっかり行ってゆきます。
最新の薬剤を取り入れた適切な治療をご提案し、ステロイドに限らずさまざまな外用薬を活用しています。重症の方には、光線療法や生物学的製剤、JAK阻害薬などの提案も行います。
※長期的に見ればアトピー性皮膚炎はよくなる病気だという事を十分に理解していただきたいと思います。気
なることはどんなにささいな事や初歩的なことでも医師にお話しください。医師はそのようなお話を大切な治療のヒントにさせていただきます。
尋常性乾癬の原因
乾癬は、体質に加えて免疫の異常が関与する病気と考えられています。
皮膚のターンオーバー(生まれ変わり)が異常に速くなることで、
・赤み
・厚み
・フケのような皮む
が起こります。
悪化要因として
・ストレス
・風邪などの感染症
・肥満
・飲酒
・喫煙
・摩擦刺激
・一部の薬剤
などがあります。
尋常性乾癬の治療
原則はステロイド外用です。症状の程度や広がりに応じて最適な治療を選びます。
外用治療(塗り薬)
まず基本となる治療です。

ステロイド外用
炎症や赤みを抑えます。
軟膏、クリーム、ローション(乳液上、漿液状)があります。
活性型ビタミンD3外用
乾癬で異常になった皮膚のターンオーバーを整えます。
軟膏、クリーム、ローションがあります。
配合外用薬
マーデュオックス軟膏
ドボベット軟膏
ドボベットゲル
ドボベットフォーム
メリット
1日1回で使いやすい薬です。
ステロイドと活性型ビタミンD3が配合されており、塗る手間が少ないです。
ステロイドとビタミンD3を調剤薬局にて混合するより薬剤の安定性に優れています。
ゲルやフォームはべとつきが軟膏よりは少なく使用感や塗りやすさに優れます。
デメリット
Very strongクラスのステロイドなので、分厚い発疹の乾癬には物足らない可能性があります。
特に大量に使用する場合は1日あたりの価格が高いです。
コムクロシャンプー
頭皮の乾癬やアトピー、脂漏性皮膚炎などに便利なステロイド外用薬です。
メリット
・1日1回で塗る手間が省ける。
・シャンプーの代わりにもなる。
・べとつかない。
デメリット
・Strongestクラスのステロイドローションに比べると効果が悪い。
・シャンプーとしてはやや物足らないと感じる患者様もいる。
・べとつく。
内服

オテズラ
オテズラは、PDE4を阻害する内服薬です。
日本での承認効能には、局所療法で効果不十分な尋常性乾癬、関節症性乾癬などが含まれます。
向いている方
外用薬だけでは不十分
皮疹が広がっている
頭皮、爪、手足などで生活に支障がある
注射薬には抵抗がある
乾癬性関節炎が疑われる
注意点
下痢、悪心、頭痛などが出ることがあります。重篤な感染症や重度の下痢などは添付文書上の重要な注意点です。
免疫抑制剤(シクロスポリン)
向いている方
比較的重症の乾癬
皮疹が広範囲
外用薬や光線療法だけでは不十分
早めに炎症を抑えたい
注意点
腎機能障害、高血圧、感染症などに注意が必要です。
定期的な採血、血圧測定、副作用チェックが必要です。ネオーラルの添付文書でも、乾癬患者で長期PUVA療法歴がある場合の皮膚癌リスクなどが注意喚起されています。
生物学的製剤(注射)
生物学的製剤は、乾癬の炎症に関わる特定のサイトカインを狙って抑える注射薬です。
代表的には、
TNFα阻害薬
IL-17阻害薬
IL-23阻害薬
IL-12/23阻害薬
などがあります。
コセンティクスはIL-17Aを標的とする薬剤で、尋常性乾癬、関節症性乾癬などが適応に含まれます。
向いている方
中等症〜重症の乾癬
外用薬、内服薬、光線療法で十分改善しない
乾癬性関節炎がある
皮疹により生活の質が大きく低下している
広範囲に皮疹がある
注意点
使用前に感染症チェック、結核、B型肝炎などの確認が必要です。
当院にても処方が可能ですが、合併症などの関係で困難な場合は、総合病院へご紹介いたします。
光線療法(紫外線治療)
当院では光線療法に対応しています。
・エキシマライト(ターゲット型ナローバンドUVB)
・全身型ナローバンドUVB
乾癬では非常に有効なことがあります。

エキシマライト(ナローバンドUVB)

全身型ナローバンドUVB
重症の方へ
広範囲に及ぶ乾癬や、通常治療で改善しない重症例では、生物学的製剤(バイオ製剤)という注射治療が選択肢になります。
代表例
コセンティクス
トルツ
スキリージ
トレムフィア
ビンゼレックス
重症乾癬で生物学的製剤が必要と判断される場合は、当院でも処方が可能です。
ただし、合併症などの関係で困難な場合には、総合病院や承認施設へ紹介します。
日常生活で気をつけること
- 皮膚をこすらない
摩擦で悪化することがあります。 - 適度な日光
紫外線で改善することがあります。
ただし日焼けのしすぎは逆効果です。 - 食生活
肥満は悪化要因になることがあります。
脂っこい食事や過食を控えることも大切です。
よくある質問(Q&A)
Q. 乾癬はうつりますか?
A.うつりません。
温泉、プール、学校、職場などで他人に感染する病気ではありません。
Q. 乾癬は完治しますか?
A.乾癬はよくなったり悪くなったりを繰り返す慢性疾患です。
完全に再発しない状態を保証することは難しいですが、治療によりかなり良い状態を維持できる方も多くいます。
Q. 乾癬とフケ症は違いますか?
A.違います。
頭皮乾癬では、厚いフケのような皮むけ、赤み、境界のはっきりした皮疹がみられることがあります。
脂漏性皮膚炎やフケ症と似るため、診察での判断が大切です。
Q. 頭皮の乾癬にはどんな治療がありますか?
A.ステロイド外用、活性型ビタミンD3外用、配合剤、コムクロシャンプーなどを使います。
頭皮は薬を塗りにくいため、ローション、ゲル、シャンプータイプなどを使い分けます。
Q. 乾癬はかゆいですか?
A.かゆみを伴うことがあります。
かゆみで掻くと皮膚が傷つき、乾癬が悪化することがあります。
Q. 乾癬はこすると悪化しますか?
A.悪化することがあります。
皮膚への刺激で乾癬が出る現象をケブネル現象といいます。
掻く、こする、傷つけることは避けましょう。
Q. 日光浴はした方がよいですか?
A.適度な日光で改善することがあります。
ただし、日焼けしすぎると逆に皮膚に炎症が起こり悪化することがあります。
無理な日焼けはおすすめしません。
Q. 食事で気をつけることはありますか?
A.特定の食品だけで乾癬が治るわけではありません。
ただし、肥満、過度の飲酒、脂質の多い食事は悪化要因になることがあります。
バランスのよい食事、体重管理、節酒を意識しましょう。
Q. 乾癬は生活習慣病と関係ありますか?
A.関係することがあります。
乾癬は肥満、糖尿病、脂質異常症、高血圧などと関連することがあります。
皮膚だけでなく全身の健康管理も大切です。
Q. 乾癬性関節炎とは何ですか?
A.乾癬に関節の炎症を伴う病気です。
手足の指、膝、腰、アキレス腱付着部などが痛むことがあります。
関節症状がある場合は早めに相談してください。
Q. 爪の変形も乾癬ですか?
A.乾癬で爪に変化が出ることがあります。
爪のへこみ、厚くなる、浮く、変色するなどがみられます。
乾癬性関節炎と関連することもあります。
Q. オテズラはどんな人に使いますか?
外用薬だけでは効果が不十分な尋常性乾癬や、関節症性乾癬などで検討します。
注射ではなく飲み薬で治療したい方にも選択肢になります。
Q. オテズラの副作用はありますか?
A.下痢、吐き気、頭痛などが出ることがあります。
多くは内服開始初期にみられますが、症状が強い場合は医師に相談してください。
Q. 生物学的製剤はどんな人に使いますか?
A.中等症〜重症の乾癬、乾癬性関節炎、従来治療で改善しない方などで検討されます。
使用前には感染症チェックなどが必要です。日本皮膚科学会のガイダンスでも、安全管理や施設連携の重要性が示されています。
Q. みやた皮膚科で生物学的製剤は受けられますか?
A.重症乾癬で生物学的製剤が必要と判断される場合は、当院でも可能です。
ただし、合併症などの関係で困難な場合には、総合病院や承認施設へ紹介します。
Q.類乾癬って何?
※乾癬と離れますが、マニア向けの記載です。
A. 類乾癬(るいかんせん / parapsoriasis)は、名前に“乾癬”とついていますが、尋常性乾癬とは別の病気です。
皮膚に薄い赤い発疹、少しカサカサした発疹がでて、長く続きます。
体幹(胸・お腹・背中・腰)に出やすいです。
かゆみは無いか、軽い
「類」= 似ている、つまり乾癬に似ているだけ。
でも実際は乾癬ではありません。
乾癬みたいな
厚い赤み
銀白色のフケ
肘膝頭皮
みたいな感じではないです。
種類
小局面型類乾癬small plaque parapsoriasis
よく見るタイプ。
特徴
・数cm
・細長い
・指みたいな形(digitate)
・薄い
・慢性
比較的おとなしい。
大局面型類乾癬large plaque parapsoriasis
注意タイプ。
特徴
・大きい
・不整形
・色むら
・皮膚が薄い感じ
・長引く
重要なのは
菌状息肉症(皮膚T細胞リンパ腫)との境界が問題になることです。
乾癬との違い
| 類乾癬 | 乾癬 | |
| 本質 | 別の病気 | 乾癬 |
| 赤み | 薄い | 真っ赤 |
| 厚み | 薄い | 厚い |
| 鱗屑 | 少ない | 多い |
| 部位 | 体幹 | 肘膝頭皮 |
| かゆみ | 軽い | ある |
| 慢性 | あり | あり |
治療
ステロイド外用、全身型ナローバンドUVB照射(光線治療)。
悪性疾患との区別
大斑状類乾癬は、皮膚の悪性リンパ腫との区別が難しいことがありますので、必要に応じて生検を行いますが、初期の病変では生検でも診断できないこともあります。必要に応じて定期的に再検査をする場合もあります。ステロイドや光線治療の反応がいまひとつであったり、発疹の見た目に何かしら違和感を感じる場合には、悪性疾患も疑うべきだと思います。
Q滴状乾癬、小斑状類乾癬 、ジベルバラ色粃糠疹の区別は?
※乾癬とは離れますが、マニア向けの記載です。
| 滴状乾癬 | 小斑状類乾癬 | ジベルバラ色粃糠疹 | |
| 好発 | 小児〜若年成人 | 中年以降やや多い | 10–35歳 |
| 発症 | 急 | 慢性 | 急 |
| 誘因 | 溶連菌感染後 | 不明 | HHV6/7関与説、感冒後 |
| かゆみ | 軽〜中等度 | 軽い/なし | 軽〜中等度 |
| 大きさ | 数 mm〜1 cm | 2–5 cm前後 | 1–3 cm |
| 形 | 水滴状 | 楕円形/細長い | 楕円形 |
| 色 | 鮮紅色 | 淡紅色〜褐赤色 | サーモンピンク |
| 鱗屑 | 乾癬様の厚め白色鱗屑 | 薄い細かい鱗屑 | collarette scale |
| 分布 | 体幹・近位四肢びまん | 体幹・臀部・大腿 | 体幹中心 |
| 配列 | バラバラ | やや一定 | 皮膚割線に沿う(クリスマスツリー) |
| 先行病変 | 風邪症状 | なし | herald patch |
| 経過 | 数週〜数か月 | 慢性持続 | 6–8週で自然軽快 |
① 滴状乾癬
典型:「風邪・咽頭炎の2–3週間後に若い人の体幹にブワッ」
特徴
・小さい紅色丘疹〜小局面
・白色鱗屑
・全身多発
・咽頭痛歴
② 小斑状類乾癬(small plaque parapsoriasis)
典型:「ずっとある、薄い、なんか湿疹っぽいけど違う」
特徴
・薄い淡紅斑
・fine scale
・やや萎縮っぽい
・指状病変(digitate)
・無症状多い
・慢性
・場所
・側腹部
・臀部
・大腿近
・体幹
③ ジベル薔薇色粃糠疹
典型:「最初でかい1個の発疹(herald patch)→ 1–2週後に全身」最初 2–5cm
数日〜2週間後に、小病変•(collarette scaleあり)が体幹に多数発生、皮膚割線方向( Christmas tree)に配列。
痒みはそこそこある
自然軽快6–8週。
結論
急に出て、ヘラルドパッチ先行し、サーモンピンク色ならジベル。そして2か月で治る。
急に出て、風邪症状の先行あり、鮮やかな赤色で鱗屑多めなら、滴状乾癬。
だらだら続いて発疹の赤色がくすんで、鱗屑控えめなら小斑状類乾癬。
監修 日本皮膚科学会認定専門医、医学博士 宮田義久