手汗や脇汗が多く、書類が濡れる、パソコン操作がしにくい、洋服に汗ジミができる、人と接するのが不安になるなどのお悩みはありませんか。
多汗症は決して珍しい病気ではなく、適切な治療により大きく改善できる可能性があります。
また、わきが(腋臭症)は体質によるものであり、清潔にしていても発生します。

どんな病気?

わき汗は原発性腋窩多汗症、手汗は原発性手掌多汗症ともいいます。脇や手のひらの汗が多く出る、原因がはっきりわかっていない病気です。遺伝性のこともあります。全身の汗がたくさん出るタイプの全身性多汗症もありますが、こちらは感染症・内分泌疾患・神経疾患・薬剤性などの体の病気のこともあります。
わきがは腋臭症ともいいます。わきのアポクリン汗腺から出た汗が皮膚の細菌によって分解され、独特のにおいが生じる体質です。
思春期以降に気づくことが多く、家族歴や湿った耳あか(軟耳垢)がある方に多くみられます。

手汗

手汗(原発性手掌多汗症)でお悩みの方は平成21年の調査で約20人に1人もいらっしゃることが報告されています。手汗は幼少期~思春期に発生します。精神的緊張で汗が増えます。昼間の汗は多いですが、寝ている間は汗が治まります。また、手が冷えたり、紫色になる場合や、手の皮がめくれたり、カビや細菌が繁殖しやすくなることもあります。本や書類が汗でぬれたり、ほかの人と握手する際に気になったりすることもあり、日常生活に支障をきたすことがあります。

重症度

<重症度の判定は?>
HDSSスコアを使用します。スコアが③,④の方が重症とされます。
①発汗は全く気にならず、日常生活に全く支障がない。
②発汗は我慢できるが、日常生活に時々支障がある。
③発汗はほとんど我慢できず、日常生活に頻繁に支障がある。
④発汗は我慢できず、日常生活に常に支障がある。

治療法


◎は当院で行っている治療。
・塩化アルミニウム20-50%液外用(自費)
・イオントフォレーシス(保険適応または在宅治療)
・A型ボツリヌストキシン局所注射(50‐100単位)(自費)
・内視鏡的胸部神経遮断術(ETS)(保険適応)
◎アポハイドローション外用(保険適応)

アポハイドローション
※2023年6月より発売


<どんな薬?>
待望の手汗の塗り薬です。エクリン汗腺という汗を出す組織に働きかけ、汗を減らします。
※エクリン汗腺は交感神経により調節されており、アセチルコリンがエクリン汗腺のアセチルコリン受容体(ムスカリンM3受容体)に作用し汗が出ると考えられています。アポハイドローションは、エクリン汗腺のムスカリンM3受容体を選択的に遮断して抗コリン作用を発揮し、汗を抑えます。

<効果>
4週時点で発汗量が50%以上改善の割合は、アポハイド使用例で52.8%、プラセボで24.3%。

<使用法>
1日1回寝る前に両手のひらに外用して、塗ったまま寝ます。5プッシュを1回分とします。12歳以上。

<副作用>
皮膚炎、目がかすむ、まぶしくなる、のどが渇く、排尿障害など

<注意点>
①前立腺肥大、閉塞性隅角緑内障、重い心臓病、腸閉そく・麻痺性イレウス、重症筋無力症の方は使用できません。
②妊娠・授乳中はなるべく避けた方が無難です。

わき汗

わき汗(原発性腋窩多汗症)は精神的緊張と気温・体温上昇によって汗が増えます。下着やシャツにシミができることがあり、日常生活に支障をきたすこともあります。また、手足の多汗を伴っていることもあります。

重症度

<重症度の判定は?>
HDSSスコアを使用します。スコアが③,④の方が重症とされます。
①発汗は全く気にならず、日常生活に全く支障がない。
②発汗は我慢できるが、日常生活に時々支障がある。
③発汗はほとんど我慢できず、日常生活に頻繁に支障がある。
④発汗は我慢できず、日常生活に常に支障がある。

治療法


◎は当院で行っている治療。
・塩化アルミニウム20-50%液外用(自費)
・A型ボツリヌストキシン局所注射(50単位)(自費または保険適応)
◎エクロックゲル外用(保険適応)
◎ラピフォートワイプ外用(保険適応)
外用剤
エクロックゲル
※2023年6月より塗りやすい容器(ツイストボトル)に変わりました。

<どんな薬?>
わき汗の塗り薬です。エクリン汗腺という汗を出す組織に働きかけ、汗を減らします。
※エクリン汗腺は交感神経により調節されており、アセチルコリンがエクリン汗腺のアセチルコリン受容体(ムスカリンM3受容体)に作用し汗が出ると考えられています。エクロックは、エクリン汗腺のムスカリンM3受容体を選択的に遮断して抗コリン作用を発揮し、汗を抑えます。
<使用法>
1日1回両わきに外用します。12歳以上。
<副作用>
皮膚炎、目がかすむ、まぶしくなる、のどが渇く、排尿障害など
<注意点>
①前立腺肥大、閉塞性隅角緑内障の方は使用できません。
②妊娠・授乳中はなるべく避けた方が無難です。
③わき毛を剃った直後に外用すると副作用が出やすくなる可能性があります。

ラピフォートワイプ

<どんな薬?>
わき汗のふき取りタイプの塗り薬です。エクリン汗腺という汗を出す組織に働きかけ、汗を減らします。
※エクリン汗腺は交感神経により調節されており、アセチルコリンがエクリン汗腺のアセチルコリン受容体(ムスカリンM3受容体)に作用し汗が出ると考えられています。ラピフォートワイプは、エクリン汗腺のムスカリンM3受容体を選択的に遮断して抗コリン作用を発揮し、汗を抑えます。
<使用法>
1日1回両わきを薬が入っているシートにてふき取ります。9歳以上。
<副作用>
皮膚炎、目がかすむ、まぶしくなる、のどが渇く、排尿障害など
<注意点>
①前立腺肥大、閉塞性隅角緑内障の方は使用できません。
②妊娠・授乳中はなるべく避けた方が無難です。
③わき毛を剃った直後に外用すると副作用が出やすくなる可能性があります。

腋臭症(わきが)

わきの下から気になる匂いがすることを言い、「わきが」とも呼ばれています。皮膚にはエックリン腺とアポクリン腺の2種類の汗腺がありますが、わきがの原因になるのは、アポクリン汗腺の方です。アポクリン汗腺から出てきた汗に、細菌感染が加わって、匂いがするため、腋臭症が発生します。アポクリン汗腺は、耳、鼻、乳輪、陰部にも存在するため、これらの部分より同様の匂いがする場合もあります。遺伝性があり、耳垢が湿っているのが特徴です。

わきがセルフチェック

以下に当てはまる方は腋臭症の可能性があります。
・耳垢が湿っている
・家族にわきがの人がいる
・衣類の脇部分が黄ばむ
・思春期頃から臭いが気になる
・自分や家族から臭いを指摘されたことがある
複数当てはまる場合は一度ご相談ください。

わきがと多汗症の違い

多汗症わきが
原因エクリン汗腺アポクリン汗腺
主症状汗が多い臭いが強い
遺伝一部あり強い
耳垢関連なし湿った耳垢が多い
保険治療あり一部あり

腋臭症の治療

当院で行っている方法には◎を付けてあります。

(1) 生活習慣の改善。規則正しい生活、バランスの良い食事、禁煙など
(2) 毎日の市販の制汗剤、デオドラントの活用
(3)  ワキの医療脱毛 自費治療です。毛が少なくなることで、細菌感染が減少する可能性があります。

ワキ脱毛について詳しくはこちら

(4)  外用剤によるワキ汗の治療 保険適応です。エクロックゲルやラピフォートワイプといった保険適応の外用剤で、大幅にワキ汗を減らすことができます。この外用剤で減るのはエクリン汗腺のほうですが、汗の量が減ることで細菌感染も少なくなり匂いが改善する可能性があります。

(5)  抗菌剤外用 保険適応です。細菌感染を抑えて、匂いが減少する可能性があります。
(6) マイクロ波によるアポクリン腺破壊 自費治療です。ミラドライなどの機器を用います。
(7) 手術療法 大きな効果が期待できますが、手術による傷跡のリスクがあります。

ワキガ(腋臭症)は、保険診療でもある程度の治療が可能です。ご関心のある方は、ぜひ一度ご相談ください。

よくある質問(FAQ)

Q.手汗や脇汗は緊張しやすい性格だから起こるのですか?
A.緊張やストレスで汗が増えることはありますが、多汗症は単なる性格の問題ではありません。
原発性多汗症では、汗を出すエクリン汗腺に対する交感神経の働きが過剰になっていると考えられています。そのため、暑くなくても汗が出たり、少し緊張しただけで大量の汗をかくことがあります。


Q.手汗や脇汗は自然に治りますか?
A.軽症の場合は年齢とともに症状が落ち着くこともありますが、多くは長期間続きます。
特に幼少期や思春期から始まった手汗は成人後も継続することが少なくありません。日常生活や仕事、人間関係に影響する場合は治療を検討することをおすすめします。


Q.手汗や脇汗は遺伝しますか?
A.多汗症には遺伝的な傾向があることが知られています。
実際に家族にも同じ症状がある方は少なくありません。ただし遺伝だけで決まるわけではなく、個人差があります。


Q.多汗症と甲状腺の病気は関係ありますか?
A.全身の汗が急に増えた場合には、甲状腺機能亢進症などの内分泌疾患が隠れていることがあります。
一方、手のひらや脇だけに症状がある場合は原発性多汗症であることが多いです。症状によっては採血などの検査を検討することがあります。


Q.手汗でスマートフォンやパソコン操作がしにくいのですが治療で改善しますか?
A.改善が期待できます。
・手汗の治療によって発汗量が減少すると、
・スマートフォン操作
・パソコン作業
・紙への筆記
・楽器演奏
・スポーツ
などがしやすくなる方が多くいらっしゃいます。


Q.手汗が原因で手荒れが悪化することはありますか?
A.あります。
皮膚が常に湿った状態になるとバリア機能が低下し、刺激性接触皮膚炎や手湿疹を起こしやすくなります。
手汗の治療によって手荒れの改善につながることもあります。


Q.多汗症の薬を塗ると汗が全く出なくなりますか?
A.完全に汗を止める治療ではありません。
治療の目的は、日常生活に支障をきたす過剰な発汗を減らすことです。適度な発汗機能は維持されるため、体温調節に必要な汗まで全て止まるわけではありません。


Q.多汗症の薬はいつから効果が出ますか?
A.個人差がありますが、数日から数週間で効果を実感される方が多いです。
十分な効果を判断するためには、通常2〜4週間程度継続して使用します。


Q.わきがは清潔にしていないから起こるのですか?
A.いいえ。
わきがは不潔が原因ではありません。
アポクリン汗腺の量や体質によって生じるため、毎日入浴していても発生します。そのため「洗い方が足りない」と心配する必要はありません。


Q.わきがは人によって臭いの強さが違うのですか?
A.はい。
アポクリン汗腺の数や活動性、皮膚の細菌叢などによって臭いの強さには個人差があります。
また、運動後や緊張時、汗をかいた後に臭いが強くなることがあります。


Q.耳垢が湿っていると必ずわきがですか?
A.必ずではありません。
湿った耳垢(軟耳垢)はわきが体質と関連が強いことが知られていますが、耳垢が湿っていても臭いが気にならない方もいます。
診断は耳垢だけでなく、臭いの程度や生活への影響などを総合的に判断します。


Q.わきがと脇汗は別の病気ですか?
A.厳密には異なります。
脇汗はエクリン汗腺からの汗が増える病気であり、わきがはアポクリン汗腺が原因です。
ただし両者を併発している方も多く、脇汗を減らすことで臭いが軽減することもあります。


Q.制汗剤と病院の治療は何が違いますか?
A.市販の制汗剤は汗や臭いを一時的に抑えることが目的です。
一方、医療機関で処方する治療薬は汗を出す神経の働きに作用し、発汗そのものを抑えることが期待できます。
市販品で十分な効果が得られない場合はご相談ください。


Q.多汗症やわきがで受診する人は多いですか?
A.非常に多くいらっしゃいます。
症状を恥ずかしく感じて相談をためらう方もいますが、手汗や脇汗、わきがは珍しい病気ではありません。
近年は保険適用の治療選択肢が増えており、以前より治療を受けやすくなっています。


Q.多汗症やわきがは皮膚科で相談してよいのでしょうか?
A.もちろん可能です。
皮膚科は多汗症や腋臭症の診断・治療を行う専門診療科です。 症状の程度や生活への影響を確認しながら、保険診療を含めた適切な治療方法をご提案いたします。

監修 日本皮膚科学会認定皮膚科専門医・医学博士 宮田義久