どんな病気?

円形の脱毛が起こる病気です。
子供から大人まで誰にでも起こる可能性があります。
頭全体の毛が抜けてしまったり(全頭型)、生え際が帯状に抜けることもあります(蛇行型)。
頭以外に、眉毛、まつげ、腋毛など全身のどこにでも起こる可能性があります。
全身の毛が抜ける場合もあります(汎発型)。
1/4に爪の変形(点状のくぼみ、横線など)が見られます。

円形脱毛症の原因

はっきりとはわかっておりませんが、自分のリンパ球が成長期の毛包を攻撃することで発生する自己免疫異常ではないかと言われています。ストレスや遺伝の関係する場合があります。
アトピー素因(ご自分またはご家族にアトピー性皮膚炎、喘息、アレルギー性鼻炎などがある)、甲状腺異常、膠原病、亜鉛欠乏などを合併することもあります。
真菌症(カビ)、湿疹・皮膚炎、皮膚(皮下)腫瘍、薬剤、膠原病、梅毒、栄養障害、外傷、自分で抜く癖などによる脱毛の場合もあります。

診断

視診以外に、採血にて膠原病や甲状腺の病気、亜鉛欠乏などを調べることがあります。

治療

治りにくいため、いろんな治療を組み合わせます。

外用:ステロイド外用、フロジン(カルプロニウム塩化物)外用
注射:ステロイド局所注射、ステロイド点滴(点滴は入院が必要)
内服:セファランチン、グリチロンなど。
冷凍治療:液体窒素を吹きかけます。
光治療:エキシマライト、ナローバンドUVBなどの紫外線照射。保険適応3割で1回1000円程度。
局所免疫治療:人工的にかぶれを頭に起こす治療。
JAK阻害剤内服(オルミエント錠):※重症の円形脱毛の患者様向けです。後述します。

経過

数か月から年単位の治療が必要です。再発を繰り返すこともあります。
軽度であれば自然治癒することもありますので、過剰な心配はしないようにしましょう。
なお、何年も治らなくても、いずれ治療がうまくいけば生えてくる可能性はあると言われています。

円形脱毛症に対する当院のこだわり

複数の治療を組み合わせて治療してゆきます。

日常生活の注意点

・過剰なストレスは避けましょう。
・無理なダイエットを避け、偏りのない食生活を送りましょう。

円形脱毛症の新しい薬剤 オルミエント錠(バリシチニブ)

<どんな薬?>
JAK阻害薬という種類の内服です※。
※円形脱毛症の病態においては、IFN-γ、IL-15などのサイトカインが関与するとされており、それらのサイトカインのシグナル伝達には、JAK1/JAK2が関与しています。オルミエントは、JAK1/JAK2の活性を阻害しました。

<効果>
・重症の円形脱毛症に効果を発揮します。
・36週(9か月)時点でSALTスコアと呼ばれる、脱毛が見られない状態の0から頭部全体が脱毛している状態の100までの範囲を表す指標が20以下になっていた患者の割合は、4mg投与グループでは35.2%でした。なお、プラセボは5.3%でした。
・1年間4mgを投与して大きく改善した場合、投薬の中止にて3か月ほどでかなり毛髪の量が減りました(再発)。しかし、2mgに減量して継続した場合は効果が維持しやすいことが分かっています。
・アトピー性皮膚炎には円形脱毛を合併しやすいので、円形脱毛症の治療でオルミエントを内服すれば、アトピー性皮膚炎も改善する可能性もあります。 

<副作用>
上気道感染、単純ヘルペス、帯状疱疹などの感染症。ニキビ、胃腸障害、頭痛、血球減少、肝機能異常、高脂血症など。

<投与法>
・円形脱毛症で、脱毛部位が広範囲に及ぶ難治の場合に限り投与が可能です。具体的には50%以上に脱毛が認められ、過去6ヵ月程度毛髪に自然再生が認められない状態です。
・投与前に採血と胸部レントゲンを撮影します。問題なければ、内服を開始しますが、安全に使用するため定期的に採血と胸部レントゲンを行う必要があります。
・1日4㎎内服。腎機能が悪い方は投与量の調整が必要です。
・投与36週(9か月)までに効果が無い場合は中止となります。

<薬剤の費用>
3割負担で1か月(28日)44,309円(4㎎)
※診察料などは別です。
※高額療養費制度を利用すれば安くなる可能性があります。

<注意点>
・妊娠中は使用できません。
・妊娠は内服中止後1か月以上たってから可能となります。